展示会のハラスメントを防ぐには、スタッフ個人に我慢や対応を任せず、出展企業と依頼先が会期前にルールと相談先を決めておくことがいちばんの近道です。事前に社員と共有し、当日はすぐに相談できる状態をつくり、終わったあとに振り返る。この流れがあるだけで、起きにくく、起きても小さく収まる現場になります。

この記事では、展示会のスタッフ・キャストを手配し、セクシュアルハラスメント防止方針(SAFE WORK POLICY)を公開しているCharmapが、出展企業が事前・当日・事後にできる具体策を整理します。

展示会でハラスメントが起きやすい理由

展示会のブースには、ふだんの職場とは違う条件が重なります。

条件起きやすいこと
不特定多数の来場者と話す初対面の相手から、容姿や身体についての発言や、望まない接触を受ける
社外のスタッフと一緒に働く社員とスタッフの間で、相談の相手や言いにくさが生まれる
写真や動画を撮る場面が多いスタッフが無断で撮影される、SNSに載せられる
会期後に懇親会がある業務の延長の場で、不適切な言動や参加の強要が起きる

とくに外部のスタッフ・キャストは、「出展企業のお客様だから」「契約先の社員だから」と、違和感があっても言い出しにくい立場にあります。だからこそ、言い出す前に相談先が分かっている状態をつくることが、出展企業にできる大切な準備です。

何をハラスメントとして扱うかをそろえる

対策の出発点は、何を容認しないかを関係者でそろえることです。Charmapは、SAFE WORK POLICYで、セクシュアルハラスメントを「人の尊厳と安全な労働環境を損なう行為」と定義し、相手が望まない性的な言動を容認しないとしています。そのうえで、次のような言動は状況にかかわらず容認しないと定めています。

  • 性的な冗談や、容姿・身体的特徴への言及
  • 相手が望まない身体的接触
  • 性的な画像・動画の共有や送付
  • 立場や関係性を利用した言動の強要
  • 拒否した人に対する不利益な取り扱い
  • 無断での撮影・録音

あわせて、「悪気がなかった」という事情よりも、相手の尊厳を優先するとしています。

方針の対象は、役員、従業員、業務委託者、フリーランス、各種スタッフ、取引先、協力会社、顧客、来場者など、業務に関連するすべての人です。対面でのやり取りに限らず、オンライン会議、チャット、SNS、懇親会、移動中の場面も含まれます。展示会でいえば、ブースの中だけでなく、事前の打ち合わせ、連絡のチャット、会期後の懇親会や移動中も対象になるということです。

何がどの法律に当たるかを細かく判断するより、「相手が望まない言動はしない」「違和感があれば相談してよい」を全員の共通の前提にするほうが、現場では機能します。法的な判断が必要な場面は、社内の担当部署や専門家に相談してください。

会期前に出展企業ができること

社員に方針とルールを共有する

ブースに立つ社員、説明に入る社員、懇親会に参加する社員に、会期前にルールを共有します。外部のスタッフにだけ伝えるのではなく、社員にも同じ内容を伝えることがポイントです。

  • スタッフ・キャストの容姿や身体について話題にしない
  • 業務に必要のない個人的な連絡先の交換や、業務外の誘いをしない
  • スタッフから相談を受けたら、「気にしないで」「我慢して」と返さず、まず話を聞く

説明会や事前の打ち合わせで、製品の説明と一緒に伝えると、特別な場を設けなくても共有できます。事前説明の進め方は展示会スタッフへの事前説明で伝えるべきことで紹介しています。

撮影のルールを決める

展示会では、ブースの記録やSNSの投稿のために写真を撮る場面が多くあります。撮影のルールを決めておくと、スタッフも安心して働けます。

決めておくこと例
誰が撮るかブースの記録は担当の社員が撮る
何を撮るかスタッフを主役にした写真は、本人の了解を得たものだけ使う
どこに載せるかSNSや社内資料に載せる前に、本人と依頼先に確認する
来場者の撮影来場者がスタッフを撮影しようとしたら、声をかけて止める役を決める

無断での撮影・録音は、SAFE WORK POLICYでも容認しない行為に挙げられています。来場者による撮影に気づいたときに、スタッフが一人で断らなくてよいよう、止める役の社員を決めておきます。

懇親会の扱いを決める

会期後の打ち上げや懇親会に、外部のスタッフを誘う場合は、事前に扱いを決めておきます。

  • 参加は自由であることを、はっきり伝える
  • 参加しないことで、評価や次の依頼に影響しないようにする
  • 誘う場合は、スタッフ本人だけでなく依頼先にも伝える

懇親会も方針の対象に含まれます。業務の延長の場であることを、社員にも意識してもらいます。

相談先を決めて、スタッフに伝える

当日、スタッフが困ったときに誰に伝えればよいかを決め、会期前にスタッフに伝えておきます。

  • 出展企業側の窓口の社員
  • 依頼先の現場の責任者、または担当者
  • 主催者の窓口(来場者の行為で、主催者の対応が必要な場合)

相談先が複数あるときは、「まずここ、だめならここ」と順番を決めておくと、スタッフが迷いません。依頼から当日までの流れと各段階での準備は、展示会スタッフはいつまでに依頼する?依頼から当日までの流れと出展企業の準備で説明しています。

会期中にできること

違和感の段階で相談できる雰囲気をつくる

朝の共有のときに、「困ったことがあったら、小さなことでもすぐに教えてください」と一言添えるだけでも、スタッフは相談しやすくなります。SAFE WORK POLICYでも、違和感の段階でも、ひとりで抱え込まずに相談してほしいと呼びかけています。

相談を受けたら、まず安全を確かめる

スタッフから相談を受けたときは、事情を詳しく聞く前に、まず安全を確かめます。Charmapは、相談・報告を受けたときの対応を、方針で次のように定めています。

  1. まず相談者の安全を確認する
  2. 必要に応じて、当事者を分離する
  3. 必要に応じて、配置の変更を行う
  4. プライバシーに配慮したうえで、事実確認を行う
  5. 社内規則に基づき、適切な対応を実施する

出展企業の社員にお願いしたいのは、1と2です。スタッフをその相手から離し、持ち場を代わる。 そのうえで、依頼先の現場の責任者に伝えます。事実確認や判断を、その場で社員が一人でする必要はありません。ブースでのトラブル全般への対応は、展示会ブースで起きやすいトラブルとスタッフの対応で整理しています。

来場者の行為には、社員が対応する

来場者からの不適切な言動に、スタッフが自分で注意するのは負担が大きく、危険なこともあります。来場者への声かけや、必要に応じた主催者への連絡は、社員が担うと決めておきます。

会期後にできること

振り返りで共有し、次に生かす

会期が終わったら、成果の振り返りと一緒に、困ったことがなかったかを依頼先と共有します。SAFE WORK POLICYでも、案件終了後に振り返りを行い、改善につなげることを予防の取り組みに挙げています。撮影や懇親会のルールで直すことがあれば、次の出展に向けて見直します。会期中の毎日の振り返りの進め方は、会期中に毎日やるスタッフとの振り返りで紹介しています。

相談した人が不利益を受けないようにする

相談や報告をしたことで、スタッフが次の依頼から外れたり、気まずい思いをしたりすることがあってはいけません。SAFE WORK POLICYでは、相談・報告を行ったことを理由とする解雇、契約解除、配置上の不利益、嫌がらせ、報復を禁止し、相談内容に関する情報共有は対応に必要な範囲内にとどめるとしています。出展企業の側でも、相談の内容を必要な人だけで扱い、相談したスタッフに不利益がないようにします。

出展企業が使えるチェックリスト

時期確認すること
会期前社員に方針とルールを共有したか
会期前撮影のルール(誰が・何を・どこに載せるか)を決めたか
会期前懇親会の扱いを決め、参加が自由であることを伝えたか
会期前スタッフに相談先と順番を伝えたか
会期中朝の共有で、相談してよいことを伝えたか
会期中来場者の行為に対応する社員を決めたか
会期後依頼先と困ったことを振り返ったか
会期後相談したスタッフに不利益がないようにしたか

依頼先を選ぶ段階では、ハラスメント対策の方針があるか、困ったときの相談先が決まっているかも確かめておきます。確認の仕方は展示会スタッフ会社の選び方:依頼前に確認すべき10項目で紹介しています。

CharmapのSAFE WORK POLICY

Charmapは、展示会キャストの育成・派遣と展示会の運営支援を行っています。展示会のキャストチーム「Charms(チャムズ)」は、出展企業の想いや目的を共有するチームの一員として、自分の言葉で製品を語ることを大切にしています。容姿や華やかさではなく、商材の理解と営業の力で成果を出すチームだからこそ、関わる人が安心して働ける現場が欠かせません。

SAFE WORK POLICYでは、予防のための取り組みとして次のことを定めています。

  • 案件開始前に、関係者へ本方針を共有する
  • 現場ごとに責任者を配置する
  • 研修を実施し、意識の向上を図る
  • 案件終了後に振り返りを行い、改善につなげる
  • 誰もが相談しやすい環境づくりに努める

相談・報告は、現場責任者またはCharmapの担当者が受けます。連絡先が分からない場合は、お問い合わせのフォームに「ハラスメント相談」と明記して連絡できます。方針の全文はSAFE WORK POLICYをご覧ください。

展示会コンパニオンに求められる役割の変化については、展示会コンパニオンとは?いま求められる役割の変化で説明しています。展示会のスタッフ・キャストの依頼や、安心して働ける体制づくりのご相談は、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

よくある質問

来場者がスタッフに不適切な発言をしていたら、社員はどうすればよいですか?

まずスタッフをその来場者から離し、持ち場を代わります。来場者への対応は社員が担い、必要に応じて主催者の窓口に連絡します。そのうえで、依頼先の現場の責任者に何があったかを伝えます。スタッフに我慢を求めないことが大切です。

外部のスタッフを懇親会に誘ってもよいですか?

誘うこと自体を一律に避ける必要はありませんが、参加は自由であることをはっきり伝え、参加しないことで評価や次の依頼に影響しないようにします。誘う場合は、依頼先にも伝えておくと安心です。

スタッフの写真をSNSに載せてもよいですか?

本人の了解を得てから載せるのが基本です。依頼先によって写真の扱いのルールが決まっている場合もあるため、載せる前に依頼先にも確認してください。無断での撮影は、SAFE WORK POLICYでも容認しない行為に挙げられています。